正直者は損をするんだなと感じた話

数年前のことです。 私は出勤しようと自転車で職場に向かっていました。いつものように住宅街の路地を抜けて職場に向かい、職場近くの住宅街の交差点を通過しようとしたその時・・・左から走ってきた車と衝突しました。 本当にその瞬間のことは走馬灯のようにスローモーションで記憶しています。左からスピードを出した車が向かって来て、頭では「避けられない」「ぶつかる」「死ぬかも」・・・と恐怖を強く感じながらも冷静に分析していたように思います。 ドーンっと音がして、自転車ごと3メートルほど吹っ飛ばされました。「轢かれると死ぬ」と思ったのでなんとか車の進路から外れようともがいたのを覚えています。 パニック状態でしたが、車が停止したのを確認すると恐怖で体が震えると同時に、死ぬことはなさそうだと安堵しました。 車を運転していた男性が降りて近寄ってきて「大丈夫ですか」と声をかけてきました。そしてたまたま通りかかった方が救急車を呼んでくれました。 幸い意識もあって動くこともできたので、救急車を待つ間、運転していた方に警察への連絡と保険会社にも連絡をと伝えました。運転していた方も事故を起こしてしまったことでかなり動揺し、また私に対しても「すいません」と声をかけ心配しているように見えました。 通りかかった方が、運転していた方に対して「スピードを出しすぎじゃないのか」と注意していたのを覚えています。私も自分が走っていた道路の方が道幅が広かったし、細い路地をスピードを出して走っていた方に対して怒りもありましたが、怒鳴る気力はありませんでした。 救急車に乗って病院へ行き、検査したところ、大きな怪我はなく捻挫程度で済みました。その際、運転していた方と警察の方が来られ、話をしました。 警察から私が走っていた側に一時停止があったことを伝えられましたが、徐行で交差点を走った記憶はあるものの停止した記憶がなかったので「止まってないかもしれません」と答えました。自分にも非があったこと、怪我も大したことがなかったことから警察の方は一旦そこで帰られ、運転していた方とも激しく言い合うことはせず、後は保険会社を通じて連絡を取り合う、ということで別れました。 その後、数日たっても何の連絡もないため警察の方に連絡をしたら、相手の方が任意保険に入っていなかったことが分かりました。 私は、事故にあって怪我をしたのに、相手に怒鳴ったりせず冷静に対応したのに、こんな目に遭うのかと愕然としました。 その後家族と相談して、自動車保険の弁護士特約を使って弁護士の方に依頼し、相手の方と話をすることになりました。 詳細としては、相手の方は知人の車を借りて運転していた、事故のあとまずいと思ってあわてて保険に入ろうとしたが出来なかった、逃げようとしたり反省していないわけではなく治療費なども支払う意思がある、とのことでした。 しかし、私が一時停止を怠っていたこともあり、過失割合が6対4程度にしかならず、車の修理代+自転車の修理代+治療費を過失割合にすると、結局私が相手の車の修理代をいくらか払うような結果になりました。納得できなくて、相手に少しでも痛い思いをさせてやりたいような気持ちになりましたが、これ以上はどうすることもできないと言われました。 弁護士さんから「相手の方からお金を出させることができれば一番良かったけど、自賠責からお金は振り込まれるし、私自身も保険で弁護士費用などもまかなわれるので、どこから出てもお金には変わりないので、このことに関してこれ以上やり合っても辛いばかりなのでこれで納めてはどうでしょう。相手の方に対しては任意保険も入らず車を運転したこと、その後の不誠実な対応に対しても私から厳しく抗議します。警察署の届け出も人身事故で受理されています」と話がありました。 これ以上もがいても、先がなさそうなことと、怪我もなく、自分が金銭的な損をしないこと、この件に構わず先に進方が方が自分にとって良いと思ったことから、弁護士さんに「わかりました。それでいいです。」と伝えました。 その後、事故の後遺症もなく元気に過ごしていますが、いまだに交差点が怖いです。この時の事故のことは納得できていない部分もありますが、ひとつ勉強になったと思って自分のなかで納めています。